高圧ガス保安法の「販売」

用語/主任者/教育/周知/帳簿/保安台帳/基準


用語の解説

 「販売」とは、通常の販売と同義である。高圧ガスの販売は、容器に充てんしたものによるもの、導管によるものとガスが封入されている冷凍設備(高圧ガス保安法適用除外を除く)をその設備ごと販売するものとがある。
 「販売の事業」とは、たまたま販売するというのではなく、継続的、反覆的に行うことをいう。
 「販売業者」とは、高圧ガスの販売の事業を営むため知事に届け出を行った者をいう。この場合、届出は販売所ごとである。
 なお、液化石油ガスを一般消費者等に販売する場合は液化石油ガス法による登録を受ける必要があり、高圧ガス保安法は適用されない。(液化石油ガス法により登録を受けた者は液化石油ガス販売事業者という。)
 「販売業者等」とは、販売業者と、第一種製造者が製造したガスをその事業所で販売できるが、その双方を総称して販売業者等という。
 「販売所」とは、高圧ガスの販売の事業を営もうとする者が知事へ届け出るときの単位である。事業としての行為をする場所が販売所に該当するかどうかは、次のようなことで判断される。*1
 @現品を取り扱うかどうかにかかわらず、また、利益金を受け取るかどうかにかかわらず、その場所で取引(契約)が成立する所をいう。取引が成立しているかどうかは、通常取引条件が決定されているかどうかによって判断されよう。注文を受けた場所から他の場所に連絡され、他の場所から現品が供給されるというような事情があっても、初めに注文を受けた場所で取引が成立する限り、その場所は販売所である。
 A注文者から単に一方的な注文を受け、その場所においては取引が成立せず、他の場所に連絡され、その連絡先においてはじめて取引が成立する場合における初めに注文を受けた場所は販売所ではない。
 B販売所と消費者間の取引を成立させるために、その取引を媒介する者いわゆる周旋(業)者は、本来取引成立の契機を与えるだけで取引の当事者とならない者であって、このような者でありまた現品を取り扱わない限り、周旋料を受け取るかどうかにかかわらず、販売業者ではない。

 *1:「高圧ガスの販売の事業を営もうとする者(液化石油ガス法による液化石油ガスの販売を除く。)」とは、高圧ガスの引渡しを継続かっ反復して営利の目的のために行うこと。例えば、報償品としてプロパンガスを引き渡そうとする者はこれには該当しない。(基本通達)

販売主任者の選任と職務

(1)販売主任者の選任(一般則第72条、液石則第70条、基本通達)
  次の高圧ガスを販売するときは、販売所の区分ごとに甲・乙種製造保安責任者免状(液化石油ガスは甲・乙種及び液石丙化)又は販売主任者免状所有者で右欄のガスの一種類以上について6か月以上の製造又は販売の経験を有する者を販売主任者に選任しなければならない。
  なお、伝票販売事業所に限り、「販売に関する6月以上の経験」に伝票販売の経験も認められる。*1

 *1:第二種販売主任者は基本通達による。第一種販売主任者については、平成10年6月23日付け、保安課より関係行政機関宛、連絡「高圧ガス保安法関係通達の正誤等について」により第一種販売主任者も追加された。

 アセチレン、アルシン、アンモニア、塩素、クロルメチル、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、酸素、三フッ化窒素、三フッ化ホウ素、三フッ化リン、シアン化水素、ジシラン、四フッ化硫黄、四フッ化ケイ素、ジボラン、水素、セレン化水素、ホスフィン、メタン、モノゲルマン、モノシラン、液化石油ガス

販 売 所 の 区 分 ガ ス の 種 類
 アセチレン、アルシン、アンモニア、塩素、クロルメチル、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、三フッ化窒素、三フッ化ホウ素、三フッ化リン、シアン化水素、ジシラン、四フッ化硫黄、四フッ化ケイ素、ジボラン、水素、セレン化水素、ホスフィン、メタン、モノゲルマン、モノシランの販売所  アルシン、ジシラン、ジボラン、セレン化水素、ホスフィン、モノゲルマン、モノシラン
 アセチレン、アンモニア、塩素、クロルメチル、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、三フッ化窒素、三フッ化ホウ素、三フッ化リン、シアン化水素、四フッ化硫黄、四フッ化ケイ素、水素、ブタジエン、ブタン、ブチレン、プロパン、プロピレン、メタンの販売所  アンモニア、一酸化炭素、酸化エチレン、クロルメチル、シアン化水素、石炭ガス、トリメチルアミン、モノメチルアミン、硫化水素
アセチレン、水素、メタンの販売所  アセチレン、油ガス、エタン、エチレン、塩化ビニル、水性ガス、水素、メタン、メチルエーテル*1
 塩素、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、三フッ化窒素、三フッ化ホウ素、三フッ化リン、四フッ化硫黄、四フッ化ケイ素の販売所  亜硫酸ガス、塩素、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、三フッ化窒素、三フッ化ホウ素、三フッ化リン、四フッ化硫黄、四フッ化ケイ素、ブロムメチル、ホスゲン
酸素の販売所 酸素
液化石油ガスの販売所(液石則) 液化石油ガス

*1: 油ガスとは、石油、重油、軽油を高温にて熱分解した場合に得られるガスを総称して油ガスという。
  石油を熱分解して軽油を製造するが、この場合熱分解の温度を高くするか、ニッケル、銅などの触媒を使用して熱分解すると、不飽和の炭化水素を多量に含むガスが得られる。その組成の一例は、メタン(CH4)50%、エタン(C2H 6)10%、プロパン(C3H6)5%、ブタン(C4Hlo)2〜5%、エチレン(C2H4)5〜7%、プロピレン(C3H6)10〜15%、ブテン(C4H8)5〜6%というような容積の割合であって、この中に含まれる不飽和の炭化水素であるエチレン、プロピレン、ブテンなどの原料として重要である。(引用:乙新 高圧ガスエ業技術 高圧ガス保安協会刊)

(2)販売主任者の選解任の届出(一般則第74条、液石則第72条)
 販売業者は、様式第35の「高圧ガス販売主任者届書」に、高圧ガス製造保安責任者免状又は高圧ガス販売主任者免状の写しを添えて、知事に提出しなければならない。ただし、解任の場合は写しの添付は不要。

(3)販売主任者の職務(法第28条、第32条第7項)
 販売主任者は、高圧ガスの販売に係る保安に関する業務を管理する。

(4)保安教育(法第27条第4項)

 販売業者はその従業者に対し、保安教育を施さなければならない。保安教育の具体的なことについては、法では具体的な期間等について、規定していないが、「第二種製造者、販売業者、貯蔵所の所有者・占有者、特定高圧ガス消費者用 保安教育の指針」(平成16年3月、高圧ガス保安協会刊)では、次のように規定している。なお、保安教育記録を保存しておくこと。

2.3教育訓練の実施計画
 教育を効果的に実施するには、計画を立て、これに従って実施していくのが普通であり、それには年間計画又は月間計画を作り、実施状況によって修正する。
 計画には対象者別に、項目、方法、順序、場所、評価基準等を盛り込み、事業所の実態に合うように作成する。この際大切なことは、教育も業務の一環であるという認識に立つこと及び対象者個々に進度が把握できるように配慮することである。また、実施した教育訓練の指導者、対象者、日時(時間数)、場所、テキスト等教育内容につき必要事項を記録し、これを保存して計画の見直しの際に役立てるようにする。この記録は、場合によっては教育を実施したということを第三者に実証する資料にもなることがある。
2.5資格取得の奨励
 従業者に製造保安責任者、販売主任者、移動監視者又は特定高圧ガス取扱主任者等の法的資格やその他各種の資格を積極的に取得させることは、取得するための経験や努力によって従業者が保安に関する知識や技術・技能を向上させることができるばかりでなく、人事異動などに伴って法的資格者が不足するような事態を防ぐことにも役立つ。

3.教育の方法と時期
 教育の方法、場所及び時期は、事業所の規模、態様等に応じて最も適した組み合わせを工夫し、効果が上がり、かつ、効率よく行われるように努めなければならない。
 3.2時期
  教育の時期については、計画に沿って定例的に実施する定例教育と何か適当な機会をとらえて行う機会教育(次項参照)がある。
 3.3機会教育
  教育のための適当な機会として次のようなものが考えられる。
 (1)初めての新しい試みを行うとき(新しい設備ができて動かすとき、設備を改造したとき、試験的な操業をやってみようとするとき、操業方法を変えたとき、新しいガスを取り扱うとき等)
 (2)法規又は規定類が変更されたとき
 (3)新人を新しい任務につけたとき
 (4)配属が変わって新しい職場に移ったとき
 (5)昇進して例えば監督者になったとき
 (6)なじみのうすい協力会社作業員が新しく入ってきたとき
 (7)職場内で事故・災害が発生したとき(反省し、対策を立てた際の内容の徹底、事後処理を進めていく上での注意事項等)
 (8)他所で事故・災害が発生したとき(自分達の職場に参考になること、作業方法の見直し、設備の変更の徹底等)

周知(法第20条の5第1項、一般則第38、39条、液石則第39、40条)

 販売業者等は、下表のガスの販売を締結したとき及び周知をしてから1年以上経過して高圧ガスを引き渡すときごとに、購入者に対し、当該高圧ガスによる災害の発生の防止に関し必要な事項を、周知しなければならない(周知の記録は消費先保安台帳に記入すること)。継続した契約(文書の有無は問わない)でない場合には、販売の都度周知しなければならない。

 ただし、購入者が次に掲げる者に該当する場合は周知をする必要はない。
  ・第一種製造者
  ・販売業者
  ・特定高圧ガス消費者
  ・車両用燃料の液化石油ガス消費者



@ 溶接・熱切断用 アセチレン、天然ガス、酸素
A 在宅酸素療法用 液化酸素
B スクーバダイビング等呼吸用 空気


@ 溶接・熱切断用 液化石油ガス
A 燃料用 液化石油ガス

周知内容

@使用する消費設備の高圧ガスに対する適応性に関する基本的な事項
A消費設備の操作、管理及び点検に関し注意すべき基本的な事項
B消費設備を使用する場所の環境に関する基本的事項
C消費設備の変更に関し注意すべき基本的な事項
Dガス漏れを感知した場合その他高圧ガスによる災害が発生し、または発生するおそれがある場合に消費者がとるべき緊急の措置及び販売事業者等に対する連絡に関する基本的な事項
Eその他、高圧ガスによる災害の発生の防止に関し必要な事項

帳簿

 販売事業者が備え付けなければならない帳簿は、次表の外に、技術上の基準による「販売先保安台帳」も必要である。これらは、販売所ごとに備え、保存しなければならない。

 (1)帳簿(一般則第95条第3項、液石則第93条第3項、基本通達)

記載すべき場合 記載すべき事項 保存期間
高圧ガスを容器により
         授受した場合
 充てん容器の記号及び番号、充てん容器ごとの高圧ガスの種類及び圧力(液化ガスについては、充てん質量)、授受先並びに授受年月日*1・*2 2年
法第20条の5第1項の
       周知を行った場合
一 周知に係る消費者の氏名又は名称及び住所
二 周知をした者の氏名
三 周知の年月日
2年

  *1「充てん容器の記号及び番号」については、当該記号及び番号に対応する容器を確実に特定することができるものであれば足りることとする。
  *2「充てん質量」にっいては、移動式製造設備より充てんを受けた場合は、充てん容器及び比重により求めた質量を記載する。

(2)販売先保安台帳(一般則第40条、液石則第41条、基本通達、質疑応答)

  基本通達では、@引き渡し先の名称及び所在地、A引き渡し先に対する販売上の保安責任者(できるだけ販売主任者免状又は製造保安責任者免状所有者が望ましい)の氏名、B消費先の場合は、消費場所・消費の方法・ガスの種類ごとの使用の状態等、C販売業者の場合は、販売業者の届出年月日とされている。
  質疑応答(昭和41年9月22日付、全国熔材組合連合会会長から通産省化学工業局保安課長宛の照会に対する回答)などを参考にすれば次のような内容が適切と考えられる。


@全般
   販売先保安台帳は、販売先(ユーザ、ディーラ)毎に一部ずつ作成しなければならない。なお、販売先が同一の会社であっても、所在地が異なれば(工場、事業所、支店等が異なる)、各々一部ずつ作成しなければならない。
A営業担当者
   各販売事業所の営業担当者名を、欄の最左端に記入する。担当者が変わるごとに、その右側に新担当者名を記入し、従来の担当者名には二重線を入れる。
B販売先の名称
  営業所、事業所の名称を含む。
C販売先の所在地
  販売先の営業所、事業所の所在地。
D販売先の引き渡し場所(販売店用のみ)
  販売店が容器置場を所有又は占有している場合はその容器置場の所在地を記入する。
E販売先が消費者の場合
 イ 消費の形態
   許可、届出している場合には、許可・受理番号と対象ガスを記入する(許可・受理番号とは、新規に許可・届出した番号を指す)。許可・届出の必要のない消費形態の場合は、「その他の消費」欄に印をつける。
 口 保安責任者
   ガス受け渡し上の担当責任者、保安係員などを記入する。保安統括者が選任されている場合にはそれらも記入する。 24時間稼動で、直毎に保安責任者が異なる場合は、空欄を活用し記入漏れのないよう対応する。
 ハ 使用の方法、使用の形態など
   原則として、販売事業者が販売しているガス種を対象とする。記入方法は、ガスの種類毎に単瓶、配管に接続されているかの区分等により、該当欄に○印をつける。なお、必要に応じて該当欄に○印をするのでなく貯槽型式、容量などを記入してもよい。
F販売先が販売店の場合
 イ 業務内容
   卸売、小売の区分をし、兼業のある場合には、その業務内容を記入する。
 口 届出、登録状況
   販売店が得ている届出、登録関係を記入する。
 八 販売主任者等
   選任されている販売主任者等の氏名を記入する。ただし、販売主任者には免状の種類も記入する。
 ニ 容器置場等の置場面積
   ガス区分毎にそれぞれの置場面積及び合計面積を記入する。
G容器置場の略図と床面積又は製造設備等の配置と見取り図
   販売先が消費者にあっては、製造設備等の配置と見取り図などを記入する。
   販売先が販売店にあっては、容器置場の略図と床面積を記入する。
H保安記録
   販売先に対して行った保安上の指導、助言、あるいは高圧ガスにかかる事故、災害等の状況、及び容器、配管、施設等異常の有無、ならびにそれに対してとった措置、その他保安上の資料となる事項を記録する。

販売の技術上の基準(概要)(一般則第40条、液石則第41条)

一般 項  目 液石 内            容
保安台帳 引き渡し先の保安状況を明記した台帳を備えること。 *1
充てん容器等  充てん容器等の引渡しは、外面に容器の使用上支障のある腐食、割れ、すじ、しわ等がなく、かつ、ガスが漏えいしないものをもってすること。
3〜 5 天然ガス関係 (略)
充てん期限を6か月以上経過していない容器の供給  容器の引渡しは、充てん期限を6か月以上経過していないものであり、かっ、その旨を明示したものをもってすること。 *2
一般消費者への供給の基準 (略)
燃料用に供給する場合の器具等  液化石油ガスを燃料の用に供する消費者に販売する者は、配管の気密試験のための器具又は設備を備えること。

*1保安台帳記載事項は次のとおり。(基本通達)
 イ 引き渡し先の名称及び所在地
 ロ 引き渡し先に対する販売上の保安責任者(できるだけ販売主任者免状又は製造保安責任者免状所有者が望ましい)の氏名
 ハ 消費先の場合は、消費場所・消費の方法・ガスの種類ごとの使用の状態等
 二 販売業者の場合は、販売業者の届出年月日とされている引き渡し先の名称及び所在地

*2「その旨」とは、容器に充てん期限を明記すべきことを規定したもの。(基本通達)(詳細略)

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